宇都宮市の北西部で採れる大谷石(おおやいし)は、その軽さと加工のしやすさから江戸時代から建築資材として重用され、産地の大谷町周辺は発展してきました。その大谷石の採掘場跡を利用して、大谷石の加工やそれを採掘する道具や技術の移り変わりを保存・展示しているのが、今回ご紹介する「大谷資料館」です。
ここでの一番の見どころは、地下に広がる広大な大谷石の採掘場跡。階段を降りた先に広がる光景からは神々しさすら感じられ、映画やコンピューターゲームの世界に迷いこんだかのように錯覚してしまいます。その非日常的な景観から、『セーラー服と機関銃(1981公開)』や『翔んで埼玉(2019公開)』といった著名な映画や、X JAPANや三代目J Soul Brothers、東方神起など、有名アーティストのPV撮影にも数多く利用されています。
これだけ広大な地下空間ですが、昭和34年ごろに機械化されるまではツルハシなどの道具を使って、人の手で掘り進められてきたというのでさらに驚き!! 壁の採掘跡からどこまでが手掘りなのかわかるのですが、「こんなところまで!?」と驚愕すること間違いありません。
映画やアーティストの聖地巡礼としてはもちろん、人間が力を合わせて成し遂げてできることの凄さを、これ以上ない形で目の前にすることができる貴重な施設です。
狭い階段をどんどん降って行くと突如あらわれる巨大空間が「地下採掘場跡」です。地上から平均約30メートルの深さに、約2万平方メートルにわたって掘り進められた、広大な地下施設。どこを向いても映画の一場面を切り取ったかのような光景が広がり、絶好のフォトスポットになっています。
なお坑内の気温は年間平均で約8度で安定しており、まるで天然の冷蔵庫といった状態。暖かい時期に訪れる際でも、何か羽織るものを1枚ご用意されることがおすすめ。また、階段の昇り降りが多いので、女性はスカートではなくパンツスタイルで、足元も歩きやすい靴でご来館ください。
地下30メートルの深さに広がる、広大な地下採掘場跡。まるで映画やゲームの巨大な地下迷宮に入り込んだような気分に。
壁の堀り跡は、掘り進め方や使用した機械によって異なり、壁面に残っている模様からおおよその年代を推測することが可能。
70キロ以上ある石を吊り上げるために使われていた、モーターウインチ。機械化以降は運搬方法も変化していきました。
一部にはライトアップや芸術家とタイアップした展示、季節限定の展示など、地下空間を使った様々な表現が行われています。
フォトスポットでは、台紙付きの記念写真(1300円)の購入や、LINEアカウントへの送信サービス(人数×300円)もあり。
戦争中には、中島飛行機の戦闘機「疾風(はやて)」の製造工場や、陸軍の地下倉庫としても使われたのだそうです。
大谷石の採掘に関わる資料を展示しているのが、こちらの「資料展示室」です。大谷石で作られた建築素材などの製作物のほか、人の手で掘り出し・運搬していた時代の道具から機械化後の道具の数々も展示。ツルハシやクサビなどの道具を使い、1枚70キロ以上にもなる「六十石(18センチ×30センチ×90センチ)」を一枚一枚切り出して、運び出していたことには驚くこと間違いありません。
また、採掘方法の移り変わりや、運搬に関わる人車軌道の整備など、機械化された社会に慣れた現代人では想像のつかないような歴史を垣間見られます。
昭和34年頃まではこれらの道具を使い、手作業で切り出していました。1日に1人で「六十石」を約12本掘り出していたとか。
切り出した大谷石を写真のようなトロッコ(人車軌道)で運搬するため、30キロ以上に及ぶ長さの線路が整備されました。
加工のしやすい大谷石は瓦や壁などの建築をはじめ、様々なものに利用されていました。写真は大谷石でできたお風呂。
当初は下へ下へと掘り進む「平場掘り」で行われていましたが、伊豆から「垣根掘り」の技術が伝わり、効率的な採掘が可能に。
入館窓口では、大谷石を使ったコースターや青玉を使ったアクセサリーなどのグッズも販売しています。大谷石は吸湿性に優れているので、オブジェやコースターを湿度の溜まりやすい場所に置けば湿気取りの効果も。また、「なべしきプレート(1000円〜)」は正方形や長方形のプレート状になっており、組み合わせてフォトスタンドとして利用したり、自分で削ってレリーフにしたりと、DIYの素材的な使い方も可能です。
ほかにも、坑内のフォトスポットを撮影した「ポストカード(200円/4枚組)」も、来館の記念におすすめですよ。
吸湿性の高さを利用した「大谷石コースター(400円)」は、裏面がコルクなのでテーブルを傷つける心配はありません。
大谷石に含まれる“青玉”と呼ばれる鮮やかな緑色の部分を使った「青玉ペンダント(1000円)」。ピアスやネックレスもあり。
「大谷資料館」の敷地内にあるカフェ&雑貨店が「ロックサイドマーケット」です。こちらではホットドッグなどの軽食と、12種類以上のフレーバーが楽しめるジェラートがいただけます。プリプリのソーセージを挟んだホットドッグ(店内/各792円)は、チリコンカン&チェダーやケール&ブロッコリーなど4種類のトッピングが選べます。
また、雑貨の販売コーナーでは、大谷石を使った花入れやLEDランプのほか、近隣で制作される陶器やガラス工芸品、はちみつやフルーツジャムなども販売しています。
ホロホロになるまで煮込まれたチキンのうま味と、スパイスの風味がほどよく効いた「チキンカレー(店内/990円)」。
「ジェラート(店内/ダブル550円・シングル440円)」は12種類以上のフレーバーを用意。抹茶や黒ゴマなど和風の味も。
近隣の工房や職人の作品には、紹介するプレートが掲示されているので、気になった作家の工房などを訪れてみては?
大谷資料館から見える、採掘跡をモチーフにしたオブジェ(1320円)。別売りのLED灯(220円)を入れればランプにもなります。