今回は、長瀞にある自然と人との共生について考えるための情報を提供する「埼玉県立自然の博物館」をご紹介します。
館内は3つのホールに分かれており、「オリエンテーションホール」では、はるか昔、埼玉の多くが海だった頃に生息していた巨大ザメ「カルカロドン メガロドン」や、ジュゴンとゾウを掛け合わせたような奇獣「パレオパラドキシア」の化石が展示されています。
「地学展示ホール」では、3億年前から現在にかけて埼玉県内の大地がどのように作られていったのか、解説のパネルとともに実際の岩石や鉱石、化石などを展示。250万年前の小型のゾウ・アケボノゾウや、縄文人の化石も見ることができます。
「生物展示ホール」は巨大なジオラマで埼玉の森林を再現。生い茂る植物のレプリカや、生息する動物たちのはく製によるリアリティは、本当に自然の中を歩いているかのよう!
一度訪れれば、身近な動植物や地層などの自然にに対する理解がぐっと深まる「埼玉県立自然の博物館」。ぜひ一度ご来館ください!
入館するとまず最初に目に入るのが、体長12メートルに及ぶ「カルカロドン メガロドン」という、約2300万年前に生息していた巨大ザメの復元模型。旧川本町(現在の深谷市)で発見された、ほぼ一個体分の歯の化石とともに展示されています。そして同じく約1200万年前に生息していた海獣「パレオパラドキシア」の、ほぼ全身が揃った化石にもご注目を! 小鹿野町で「全身骨格」で発見された「般若標本」をはじめ6つの化石は、チチブクジラ・オガノヒゲクジラと共に国の天然記念物に指定された貴重なものです。
再現された「カルカロドン メガロドン」の口の復元模型は、フォトスポットになっています。その大きさにびっくり!
すぐ隣のケースには歯の化石がズラリ。写真中央の口が、一般的なホホジロザメの口で、大きさの違いは一目瞭然です。
「パレオパラドキシア」の化石から復元した骨格標本。左から歩く、泳ぐ、食べる姿を再現しています。
1972年に秩父市で発見された「パレオパラドキシア」の化石「大野原標本」。こちらには頭骨が残っています。
「さわれるはく製コーナー」では、県内に生息する動物のはく製を展示。動物ごとの毛質の違いを感じられます。
県内に生息する昆虫や植物の標本も展示しています。あなたはこの中の何種類を見たことがありますか?
県内に生息する鳥のコーナーでは、解説文に付いたマークを電子ペンでタッチすることで、鳴き声が聞こえてきます。
館内にあるクイズに答えて、オリジナルカード(週替わり)をゲット! 答えはすべて館内にあるのでお見逃しなく!!
こちらの「地学展示ホール」では、約3億年前に埼玉県が海の底にあった時代から、秩父山地や関東平野が生まれるまでの歴史のジオラマや解説パネルと共に、各層の岩石の実物を展示。普段何気なく目にしている河原や山の石にも、何億・何千年の歴史が詰まっていると思うと感慨深いものがあります。
また「糸金」と呼ばれる自然金や車骨鉱、黄鉄鉱など秩父鉱山で産出される鉱物や、アケボノゾウや縄文人の化石なども見ることができます。
「秩父帯」や「三波川帯」、「秩父盆地層群」など、埼玉県内の地帯で見られる岩石。並べると岩ごとの特徴がはっきり!
地殻変動や底火山の活動により、溶岩や火山灰が「緑色岩」に、サンゴやウミユリなどが「石灰岩」になる様子を解説。
秩父鉱山で産出される金は、閃亜鉛鉱などの鉱物に細長いヒモのような形が特徴で「糸金」と呼ばれるのだそう。
県内で化石が発見された「アケボノゾウ」の骨格復元模型。現代のゾウより小柄で、肩の高さはおよそ2メートルほど。
約1500万年前の秩父に生息していた「チチブサワラ」の復元模型。推定体長2メートルの巨大魚は、どんな味だったのでしょう?
秩父市からは、縄文人の化石と共に石器や土器が発見され、岩や土が身近な道具の材料であったことがうかがえます。
埼玉県内の森林の景観を、原寸大のジオラマで再現しているのが「生物展示ホール」。はく製の動物たちはもちろんですが、木々や植物たちも「本物を植えてあるの?」と思ってしまうリアルな作りで、思わず目を凝らしてしまいます。
動物の生態をリアルに再現しているため、身を隠すように潜んでいる動物たちもいますが、通路沿いに設置されたスイッチで照らし出すことが可能。鳥などの動物は電子ペンで鳴き声を流すこともできるようになっています。
原寸大のジオラマで再現された「冬枯れの雑木林と池や沼」。葉を落としたコナラやエゴノキの中、翼を休める渡り鳥の姿が。
動物たちの居場所はパネルに書かれていますが、スイッチを押すとライトが隠れている動物の姿を照らしてくれます。
秩父地域でみられる石灰岩地の鍾乳洞を再現したジオラマの中には、2種類のコウモリの姿が……。
視線を感じてふと上を見上げると、岩山にサルの一家がこちらを威嚇!? 思わず声を上げそうになっちゃいます。
博物館の2階は企画展のスペースになっており、2024年6月16日まで「入間川流域の自然遺産調査から見えたこと」を開催中です。
天覧山や有間山など入間川流域を中心に、「埼玉県立自然の博物館」が令和元年度~令和5年度までの5年間に渡って行った自然遺産調査の成果を展示しています。動植物や化石の収集方法も解説しているので、夏休みの自由研究の参考にもなるかもしれませんよ。
フィールドワークやワークショップなども随時開催しているので、詳しくは公式サイトをご覧ください!
「埼玉県立自然の博物館」で埼玉の自然について学んだら、長瀞のすぐ近くの「岩畳」でその景観や地層をお楽しみください。
博物館の前にある「月の石もみじ公園」から、荒川沿いに出て「哲学の道」を歩けば一時間もかからずに「岩畳」に到着する、ちょっとしたハイキングコースになっています。ただし、足元は岩場や未舗装の道が続くので、スニーカーなどのご用意を忘れずに!
モデル:七里栞菜(セントラルジャパン)