「江戸東京たてもの園」は、現地で保存することができなくなった文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示するため「東京都江戸東京博物館」の分館として開設された施設です。
正面出入口にあたる「光華殿」を改修した「ビジターセンター」をはじめ、園内には江戸時代の農家や、明治・大正の住宅に昭和の大豪邸まで、様々な建築物を当時の姿そのままに保存。これらの建造物の中に入ることもできるため、建築様式や間取り、室内の雰囲気などから、その時代が持つ特有の空気なども感じられます。
また、園内は大きく3つのエリアにわかれており、それぞれ政治家の邸宅など歴史的な建物の集まるエリアや明治~昭和の商店が並ぶ下町、江戸時代の田園風景や戦前の山の手の街並みなどを再現。園内を歩いているだけでタイムスリップしたかのような気分が味わえるほか、SNSに投稿したくなるようなフォトスポットがいっぱい!!
江戸時代や幕末などの歴史物が好きな方はもちろん、家族みんなで楽しく昔の暮らしに触れることができる「江戸東京たてもの園」。お子様の自由研究の題材探しなどにもおすすめですよ!
園の入り口である「ビジターセンター」は、1940年に皇居前広場で行われる式典のために仮設された式殿を改修した建物。内部には江戸東京の建築史を知ることができる導入展示や、特別展などを開催する「展示室」を備えています。
「ビジターセンター」を抜けた先に広がる「センターゾーン」は、赤坂にあった邸宅と庭園の一部まで再現した「高橋是清邸」や、旧宇和島藩伊達家が大正時代に東京に建てた「伊達家の門」など、格式ある歴史的建造物が集まるエリア。四季ごとに変わる草花と、大邸宅の織り成す景色も見どころです。
1902年に建てられた、第20代内閣総理大臣・高橋是清の邸宅。高級建築材である栂(つが)を使った「総栂普請」が特徴。
この時代には珍しいガラス障子が使われており、当時のガラスがいまも残っています。2階からの眺めも絶品!
かの伊達政宗公の庶子・秀宗を祖とする旧宇和島藩伊達家が、白金に建てた屋敷の表門。武家らしい風格のある門構え。
1652年に尾張藩主・徳川光友の正室千代姫が、母を供養するために建立した「旧自証院霊屋」。都の指定有形文化財です。
明治~昭和の時代に洋風建築を取り入れたモダンな建物が並ぶ「山の手通り」と、江戸時代に建てられた武蔵野の農家や徳川譜代の下級武士の家である「八王子千人同心組頭の家」など、茅葺きの建物が集まったエリアがある「西ゾーン」。
ぱっと見ると同じように見える江戸時代の茅葺きの建物も、農家と武士など住む人の違いで造りの細部が違う点に注目してみると面白いですよ。
写真の白壁が印象的な「小出邸」は、日本のモダニズム運動を主導した建築家の堀口捨己が設計して、1925年に建てられた住宅です。
第二次世界大戦後の1952(昭和27)年に、西麻布に建てられた「三井八郎右衞門邸」。こちらも東京都の指定有形文化財です。
この豪華絢爛なお部屋は、三井邸の1階にある客間。この客間と食堂は、1897年ごろに京都に建てられた邸宅から移築しています。
江戸時代後期、現在の三鷹市に建てられた「吉野家」。名主役を務めた家で、式台付きの玄関や奥座敷を備えた格式ある作り。
当時と同じように囲炉裏に火をつけ、茅葺の屋根の害虫駆除や除湿をしているため、屋内に燻された香りが残ることも。
1937年に建てられた「常盤台写真場」。2階が写場(スタジオ)になっており、採光の為に磨りガラスがはめられています。
平屋の洋館だった建物を、1910年ごろに移り住んだドイツ人建築家によって3階建てに大幅に増築された「デ・ラランデ邸」。
エリアの最後にご紹介する「東ゾーン」は、昔の商店や居酒屋、旅館などが立ち並ぶ、ファミリーに一番人気のエリアです。店内に据えられた大樽から空き瓶に移して量り売りをしていた醤油店や、筆や硯(すずり)がずらりと並んだ文具店など、現代では見ることのできないお店の数々は、ここだけで夏休みの自由研究ができそうなほど。
また、このエリアには『千と千尋の神隠し』のモデルになった建物があるのでお見逃しなく! どの建物がどの場面のモデルになっているのか、探しながら歩いてみてくださいね。
1929年に建てられた銭湯の「子宝湯」。神社仏閣を思わせる豪華な外観は、この時期の東京で流行し、東京型銭湯の定番になりました。
高い天井で開放感のある「子宝湯」の浴室内。男湯の壁には富士山、女湯の壁には湖の見事なペンキ絵が描かれています。
江戸~昭和初期の店舗兼住宅に多い「出桁(だしげた)造り」で建てられた「小寺醤油店」。港区の白金にあったお店です。
注文された醤油を升で量って大樽から空瓶に注ぐ、量り売りをしていました。壁に貼られたポスターも当時のレプリカ。
神田の万世橋にあった、明治時代に建てられたと推定される「万世橋交番」。レンガ造のデザインは今でもお洒落ですね。
1956年に建てられた「鍵屋(居酒屋)」の店内。1970年の建物・店内に復元され、メニューや値段も当時を偲ばせるものに。
園内の見どころは建物だけではありません、暮らしにまつわる「屋外展示物」にもご注目を!
東ゾーンにある「都電7500形」は1962年に製造されたもので、現在では荒川線しか残っていませんが、この車両が生産された当時は渋谷駅前から新橋や日本橋浜町、神田須田町への路線も走っていました。また、ビジターセンターからエントランス広場に出てすぐ左に展示されている「午砲」は、江戸時代の「時の鐘」に替わり、正午に空砲を撃って都民に正確な時間を知らせていたもの。電波時計などのなかった時代ならではの存在です。
1925年から1970年まで使用されていた、現代版の火の見櫓が「上野消防署(旧下谷消防署)望楼上部」。
都民に正確な時刻を知らせるため、正午に撃たれていたのがこの「午砲」。皇居の旧本丸に設置されていたものです。
園内を歩いて一息つきたくなったなら、「西ゾーン」でご紹介した「デ・ラランデ邸」の中にある「武蔵野茶房」というカフェがおすすめ!
大正レトロをコンセプトに、豪華なシャンデリアに照らされたテーブル席や、レンガ造りの暖炉を備えた応接間など、雰囲気満点の店内でお食事やケーキ、パフェなどがいただけます。
ドイツビールなどのアルコールや、ソーセージの盛り合わせといったおつまみにピッタリなメニューもあるので、おクルマの運転がない人は大正時代へのタイムスリップ気分に酔ってみてはいかがでしょうか?
すっきりと爽やかな香りと苦みの「特製有機アイス珈琲(748円)」。氷もコーヒーで作られ、溶けても味が薄まりません。
「特製おいものカフェ(990円)」は、スイートポテトの土台に、あんこや安納芋、アイスクリームが乗った和風パフェ。
「ビジターセンター」内の「ミュージアムショップ&カフェ」では「江戸東京たてもの園」のオリジナルグッズやレトログッズを販売しています。
ご来園の際にぜひ購入していただきたいのが、『江戸東京たてもの園 解説本(315円)』と『江戸東京たてもの園でわかる日本建築史(298円)』という2冊の公式本。それぞれ300円程度という破格のお値段ながら、園内の建物の平面図や解説を読みながら園内を回ると理解が深まります。
このほか、宮崎駿監督がデザインしたマスコットキャラクター、「えどまる」グッズもおすすめです。
宮崎駿監督がデザインした、マスコットキャラクターの「えどまる」。緑豊かな野外博物館をイメージしています。
園内建造物の解説本と、日本の建築史を紹介した本は、入場前に購入して実際の建物と見比べるのもおすすめですよ。
来園の記念やお友達へのお土産に、お手軽さが魅力の「たてもの園オリジナルポストカード(120円)」。
明治や大正、昭和の時代を感じさせるレトロな雑貨も販売しています。ふろしきは現代版エコバックとして使ってはいかが?