私たちの生活のすぐ近くにありながら、普段は意識することのない科学の世界。そんな科学や技術が社会に果たす役割を知ってもらい、未来の可能性について考え、語り合うための施設が東京のお台場にある『日本科学未来館』です。
館内の展示は常設展と企画展にわかれ、常設展は私たちの住む地球の歴史や未来を知る「地球とつながる」、私たちの生活や社会がどう変わっていくかを考える「未来をつくる」、そして宇宙や地球環境、生命の仕組みといった私たちの回りの“世界”を知る「世界をさぐる」の3つに分かれています。
“科学”というと難しく考えがちですが、展示されている最先端の科学技術を駆使したアンドロイドやロケットのエンジンを見ているだけでも楽しめ、そこから湧く「なぜ?」という疑問や、「こういうこともできるかも?」と想像力を働かせることで、科学的な知識を身に付け、探求心を育む施設です。
館内にはノーベル賞受賞者たちからの、「いつまでも考え続けてもらいたい問い」を集めた展示もあり、ここで抱いた小さな疑問や好奇心が、将来のノーベル賞受賞者を生むかもしれません。
1〜6階を吹き抜けとしたスペースにつり下がっている球体ディスプレイが「ジオ・コスモス」です。1000万画素を超える超精密な有機ELパネル1万362枚を使い、人工衛星が撮影したデータを毎日取り込むことで、過去90日間の“リアルな地球の姿”を映し出しています。3階〜5階には「ジオ・コスモス」をぐるりと囲むように回廊状のスロープがあり、真下から見上げる1階と併せて様々なアングルから地球の姿を見ることが可能です。このほか、決められた時間にはアポロ11号の月面着陸を再現した映像など、特別プログラムも上映されています。
『ジオ・コスモス』は人工衛星が撮影した地球の姿を映し出すだけでなく、月面の映像を投影することも。月の裏側がのぞけます。
地球の温暖化や渡り鳥の移動、大規模な津波の伝わる状況など、地球規模のデータにアクセスできる「ジオ・スコープ」も。
現在からの積み重ねで最終目標に向けて考えるのではなく、最終目標から逆算して達成するべき途中の目標を設定していく考え方が“逆算思考”です。この「未来逆算思考」では、あなたが目標とする地球を子孫に残すため、ゲーム形式で逆算思考に挑戦していきます。最初に理想とする地球の姿を選んだら、ゴールからスタートに向かって数々の障害が待ち受けるステージをチェック。続いてスタートラインから、地球を無事ゴールまでたどり着けるルートを設定して発進させましょう。
あなたが子孫に残す地球の姿は、果たして--!?
スタート側から見えるのはステージの一部のみ。待ち受ける障害を避け、無事に地球をゴールまで送り届けましょう!
ゲーム終了後には、あなたの子孫から送られてきたメッセージを読むことができます。そこにはどんな地球が?
約1000年先の未来--人間が消えてしまった世界で5人の博士が残した手がかりを元に、空間情報科学の力を使って彼らが残したメッセージを受け取りましょう! ここでは謎解きゲームに参加する要領で、“空間から情報を得る技術”や“人の状態から情報を得る技術”、“個人の情報を守る技術”といった空間情報科学を体感的に知ることができるインタラクティブな展示となっています。
様々な情報がデジタル化されていく今の世の中が、どのような仕組みでできているのか、さらにはこれからどうなるのかが見えてくるはずです。
あなたの足元に出現する"ミー"は、あなたの情報が形となったもの。あなたが情報を得るごとに、姿を変えていきます。
約1000年前の博士たちは、それぞれの机や研究装置などの手がかりを残しています。
いまではすっかり我々の生活に欠かせない存在となったコンピューター(計算機)。現在では、コンピューターを使って作り上げたものと自然物の違いが、我々人間の目では区別がつかないものにまでなっていることを示すのがこちらの展示です。
どこにでもあるような砂時計に使われている砂粒がスマートフォンなどにも使われている極小のコンデンサだったり、畳の上に百人一首の札が置かれているように見える展示が一枚の印刷物だったり……技術の進化に驚くことでしょう!
生け花と美しい蝶の展示。この中には本物の蝶(標本)と、人工物の蝶が混ざっていますが、ほとんど見分けがつきません。!
モニターに次々と映し出される人の顔や動物、昆虫たち。しかしこれらはすべてAIが造ったこの世に存在しない映像です。
宇宙飛行士たちが様々な実験を行うのが、地上から400キロメートルの高さに浮かぶ国際宇宙ステーション(ISS)です。この「こちら、国際宇宙ステーション」では、宇宙飛行士たちが行う様々な実験を紹介するとともに、生活を送るために必要な設備である「宇宙居住棟」を再現しています。居住棟には個室やトイレのほか、暮らしに欠かせない宇宙での食事=宇宙食の展示も充実。「宇宙食を食べてみたい」と思った方には、一部のメニューを1階のショップで販売していますので、ぜひお立ち寄りを!
宇宙ステーションの個室は人間一人がやっと入るサイズ。無重力なので、寝るときは壁に固定した寝袋で寝るのだそう。
外壁には宇宙飛行士の直筆サインが! 宇宙飛行士の毛利衛さんは、日本科学未来館の館長で、この展示の総合監修も担当。
この宇宙を構成しているものは、人間の目にはとらえることのできないものも多数あります。この世の物質を構成する素粒子・ニュートリノもそのひとつ。そんな人の目には見えないニュートリノを、観測するための装置が岐阜県・神岡町にある“スーパーカミオカンデ”です。ここでは“スーパーカミオカンデ”に使われている、光電子倍増管の実物を展示しています。
なお、こちらの展示は2015年に「ニュートリノ振動の実証」でノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章博士が監修されているものです。
岐阜県にある「スーパーカミオカンデ」の10分の1サイズの模型。ニュートリノをとらえる様子を体験してみましょう。
同じく目には見えない放射線を観測することができる、「霧箱」という装置。煙のように見えるのが放射線の通った軌跡です。
館内をたっぷり歩き回ったら、『日本科学未来館』の最上階、7階にあるレストラン「Miraikan Kitchen」のお食事をどうぞ。宇宙では味が薄く感じられることから、濃いめの味付けとスパイスでアクセントを効かせた「スペースカレー(700円)」のほか、「タコライス(720円)」や「グリルチキンサラダプレート(800円)」といった野菜たっぷりのヘルシーなお食事も提供しています。
お料理同様オススメなのが、窓から見える景色!レインボーブリッジや東京タワーを眺めながら、ゆったりとしたひと時をお楽しみください。
チキンライスを卵で包んだ土星にデミグラスソースの輪が。ウインナーの土星人がかわいい「土星オムライス(750円)」。
「カオマンガイサラダプレート(850円)」は、タイ風チキンライスにたっぷりのサラダが添えらえた、健康的な一皿。
ソフトクリームの上にトッピングされたカラービーズで、ニュートリノを表現した「ニュートリノミルクティー(600円)」。
天井が高く開放的な店内。窓沿いのカウンター席からは、お台場のフジテレビやレインボーブリッジが望めます。
1階にあるミュージアムショップ「Miraikan Shop」では、『日本科学未来館』のシンボルマークや展示アイコンをあしらったオリジナルグッズを販売しています。科学グッズというと、お堅いイメージがありますが、ヘモグロビンの塩基配列やディープラーニングの仕組みをプリントした「サイエンスTシャツ」など、ユニークなアイテムがいっぱい! お子様には「DNA抽出キット」をはじめ色々な実験キットも販売していますので、自由研究のテーマ選びにもピッタリです。
こちらは入館無料でお買い物ができますよ。
JAXAから宇宙日本食の認定を受けた「スペースカレー(540円)」と「宇宙白飯(432円)」。これで自宅が国際宇宙ステーションに?
オイラーの等式やカラビ・ヤウ多様体など、科学にまつわる数式や図形をあしらったアパレル。お子様サイズも販売しています。
『日本科学未来館』のシンボルマークが入った文房具や日用品も販売。これを使っていれば、科学に詳しくなれそうな気が?
身近な食べ物などからDNAを取り出す実験ができる、「DNA抽出キット(1571円)」。お子様の自由研究にもオススメです。
モデル:Matsumoto(tfac)
※展示やプログラムの内容は2020年2月に取材した時点でのものです