今回ご紹介するのは関越自動車道の所沢I.C.から入間方面へ約600メートル、所沢総合食品地方卸売市場の敷地内にある「拉麺 イチバノナカ」です。
こちらの「拉麺 イチバノナカ」は、「㐂九八garage」などを所沢市内で出店している「㐂九家」グループのラーメン店。グループといっても全店で同じラーメンを提供しているわけではなく、店主・大野さんの和食の技術と経験を生かして各店舗ごとに様々なメニューを展開しています。なかでも「サーモンとイクラと生海苔と山葵の和えそば（1300円）」は、地上波TVの人気番組や人気タレントが紹介したことで全国に知られた看板メニュー。このほか動物系と魚介系のWスープの「醤油ラーメン（950円）」や潮ダレを利かせた「塩ラーメン（950円）」、今回ご紹介する「真鯛の荒焚き潮SOBA（1000円）」の4種類をレギュラーメニューとしています。
実際にお店を訪れてみて、意外だったのは入店までのハードルの低さ。店名通り「市場の中にある飲食店」ということで、市場関係者以外お断り的な雰囲気も想像していたのですが、店舗は市場の建物と駐車場を挟んだ向かいにあり完全に独立した形。市場へのクルマの乗り入れも自由なので、ショッピングセンターと変わらない気軽さで入場できます。程よい間隔を設けた座席の配置や木目を生かした温かみのある内装、券売機での購入前にメニューの説明をしてくれる丁寧な接客など、とてもアットホームな雰囲気。お子様用のイスなども用意してあり、ファミリーでのご来店も歓迎という方針は「㐂九家」のグループ共通のものだとのこと。
市場の敷地内という立地的な条件から日曜日は定休日となっており、平日～土曜日の営業時間も基本的に昼のみですが、「このラーメンのためだけに訪れる価値」のある一杯を提供している「拉麺 イチバノナカ」。ぜひ一度ご訪問いただきたい名店です！

今回は「拉麺 イチバノナカ」のオススメメニュー、「真鯛の荒焚き潮SOBA」をいただきました。
お料理が出てきて最初に目を引くのが、とんこつや鶏白湯のような白濁したスープ。しかし香ってくるのは間違いなく鯛の香りで、“荒焚き”の名に納得してしまいます。鯛の香りに鼻をくすぐられながらスープを一口含むと、白身魚ならではの甘さを含んだ滋味深いうま味が口いっぱいに広がって、そのまま全身へと広がっていくかのよう。その秘密は宇和島産の真鯛を丁寧に下処理して6時間以上かけて煮込むことで、鯛のうま味に満ち溢れながらサカナ特有の生臭さを一切感じさせない、絶品スープへと仕上げているのだそう。しかもラーメンとしてのボディの厚みはしっかり持たせながらも、スープに使っている食材は鯛と節系のみというのだから二重に驚きです。
そんなスープに合わせるのは加水率低めな平打ちの細麺。白湯スープと細麺といえば、とんこつラーメンや水炊きのそうめんに通じ、味わいこそ異なるものの間違いのない鉄板な組み合わせ。滑りの良い麺を少し勢いよくすすることで、スープの香りが一段と広がって感じられます。
これだけでも鯛のうま味たっぷりなラーメンと言えるのですが、トッピングの鯛のほぐし身が加わることで味わいはさらにワンランクアップ！　軽く表面を炙ったほぐし身はスープに焼き魚のような香ばしさを加えるだけでなく、麺と一緒にほぐし身を口に入れることで白身魚の弾力ある噛み応えと、そこから染み出す魚のうま味が加わって、文字通り「鯛の美味しさすべてを凝縮した一杯」へと昇華します。
途中で味の変化を求めるなら、トッピングのバラ海苔を麺にからめることで磯感をアップさせたり、三つ葉の香りでコントラストを楽しんだり、刻みタマネギでリセットしたりと展開を広く用意する周到さも嬉しいポイント。
最後になりましたが、器を覆う大判のチャーシューも魚介系中心に構築された一杯の中、低温調理による肉々しい弾力と動物性のうま味が際立ち、質量以上の存在感を放っています。
「魚の王様」と呼ばれる鯛を知り尽くした、和食出身の料理人ならではの「真鯛の荒焚き潮SOBA」。魚介系ラーメンの既成概念を打ち破る一杯が楽しめますよ！