今回ご紹介するのは、埼玉県久喜市にあるつけ麺をメインに提供している「麺屋みつば✙クローバー」です。
アパレル業界でデザインの仕事をしていた店主の木村智志さんが、「自分の手で分身となる作品を作る仕事をしたい」という欲求の高まりから、企画からデザイン、製造、販売までを自ら行える仕事として飲食業界へ転身。フレンチ・イタリアンや家系ラーメンのお店を経て独立を果たし、2017年にこちらの「麺屋みつば✙クローバー」をオープンしました。
そんなセルフプロデュースにこだわった「麺屋みつば✙クローバー」では、木村さんの分身となるつけ麺を提供。国産小麦を100％使った自家製麺は、品種ごとの特性を活かすために部位ごとに使用して理想の風味や食感を引き出し、140キログラムもの豚・鶏・野菜を使って3日間煮込んだ超高濃度のつけダレを組み合わせた「つけ麺」が評判を呼び、郊外の立地ながら行列の絶えないお店として高い評価を集めています。
すでに高い評価を得ていますが、木村さんにとっては「まだ理想の5割ぐらい」とのことで、「頭の中では最終的に目指す形ができているのですが、そこに到達するためには食材だけでなく、お店の設備や環境も整えないといけないので。いまも製粉機を導入する準備を進めていて、近く自家製粉の麺にリニューアルする予定です」と、さらなる進化を構想しているそうです。
あくなき探求心を持つ木村さんに、今後の目標をうかがったところ「このお店でも人を雇っていますけど、このお店の味を完成させて若い人に残したいんですね。いまはごく一部のエリートコースから外れてしまうと、若い人が夢を見ることができない時代と言われているけど、ラーメン店でもこれだけの夢が見られるというのを示してあげたい」と真剣に語り、「そうしたら僕は自分の手が届く範囲でやれるお店を自由にやりたいですね。家系なら僕のラーメンの原点なので誰にも負けない自信がありますし、清湯系だって僕ならこうするという考えがありますし（笑）」と、まだまだラーメンへの創作意欲は尽きない様子。
妥協を排して常に高次元の進化を続ける「麺屋みつば✙クローバー」のつけ麺、遠征してでも食べる価値のある逸品ですよ！

今回、「麺屋みつば✙クローバー」では、「つけ麺 並（1100円）」と「特製トッピング（480円）」をいただきました。
まず目を引くのは美しく整えられた麺の存在感！　お店のおすすめの通りに麺を一本そのままいただくと、歯を押し返さんばかりの弾力を楽しむごとに小麦の香りと味わいが口いっぱいに広がっていきます。「特製トッピング」に付いた特選塩とレモンは、この麺をシンプルに楽しむための付け合わせ。別皿に移した麺に特選塩とレモンをふりかければ、塩との相乗効果で小麦の旨味が際立つとともに、レモンのさわやかさが後を引いてそのまま一皿いけてしまいそう。
一方のつけダレに目を移すと、大きなチャーシューの隙間から透明度ゼロのつけダレが顔をのぞかせています。このつけダレ、麺を乗せても沈まないほどの高粘度で、麺の味と香りを消さない程度にからむ絶妙な組み合わせ。味の方も見た目通りに超濃厚で、最初はトッピングの魚粉の香りが感じられますが、そこからは豚・鶏・野菜が煮溶けて一体化した、濃厚なポタージュのような強烈な旨味の塊がドンッ！　と舌を襲います。ドロドロ系のつけダレといっても背脂などを過剰に加えた脂の濃厚さではないため、あと味のキレが非常にシャープで、食べ進めるごとに麺とつけダレの旨味や香りがグラデーションとなって楽しめます。
トッピングで目を引く大判のチャーシューは、脂に頼らないつけ汁との相性が抜群。少しほぐして麺と一緒にいただけば、脂っこさをお好みで加えることが可能。つけ汁の中に沈められたメンマも、細やかな繊維の歯ごたえが麺のもっちりとした触感との対比を楽しめます。
別皿で提供される「特製トッピング」は、前述の特製塩とレモンを濃厚なつけダレの合間に挟むことで相互の長所を強調し合い、麺をたぐる手が止まらなくなるほど。炙りを加えたバラチャーシューは、有明産海苔とネギを乗せるとメインの一皿のような風格。中華風の甘ダレを塗った低温調理の肩ロースと炭火吊るしチャーシューは、個性の異なる肉の旨味が楽しめます。味玉もしっかり半熟に仕上がっているので、つけダレの味変だけでなく塩＋レモンに黄身を加えるのもオススメです。
“濃厚つけ麺”といえば脂っ濃いもの、そんな先入観を覆す「麺屋みつば✙クローバー」のつけ麺をぜひ一度お試しください！！