元々ラーメン業界に勤めていた店主の鈴木一成さんが、独立した先輩の影響もあって自分のお店を出すことを考えるようになり、有名店での修行を重ねて2018年10月に西武池袋線・狭山ヶ丘駅西口にオープンしたのが「自家製手もみ麺 鈴ノ木」です。
ラーメン店をはじめるにあたり、鈴木さんが考えたのが「お子様にも安心して食べられるラーメンを」というコンセプト。こうした将来を担う子供への思いはお店の名前にも表れており、“鈴ノ木”という名前は鈴木さんご自身の名前だけでなく、大ファンだという産婦人科医療マンガ『コウノドリ』の作者・鈴ノ木ユウさんの名前から拝借した命名なのだそうです。製麺所から既製の麺を仕入れるラーメン店も多い中、国産小麦の自家製麺にこだわっているのも味だけでなく食材に対する責任感の表れでもあるのでしょう。
提供するメニューはしょう油・塩・まぜそばの常設メニューと、季節ごとに入れ替わる煮干ラーメンの4種類。最近のお店には珍しく日替わりの限定メニューはありません。
目新しさに負けない確かな味を持った「自家製手もみ麺 鈴ノ木」のラーメンは、オープン以来ラーメンメディアやグルメサイトでも高い評判を呼び、いまや行列のできる人気店になっています。そんな鈴木さんに今後の目標を尋ねたところ、「夫婦ふたりでずっとやっていければというのが一番ですけど、所沢エリアには美味しいラーメン店が多いので、“所沢でラーメンといえば”と名前が挙がるようなお店になれれば…」と真剣に語り、「あとは西武ライオンズの選手が来てくれるようになったらうれしいですね」と笑って付け加えた、西武ライオンズの大ファンだという鈴木さん。
まるでカフェを思わせる外観や店内ですが、テーブル席にはお子様を歓迎するように絵本の棚が置かれています。温かなご夫婦がとびきりのラーメンを提供する「自家製手もみ麺 鈴ノ木」に、ぜひ一度足を運んでみてください。

今回「自家製手もみ麺 鈴ノ木」では、すべてのトッピングを乗せた一番人気のメニュー、「醤油特製ラーメン（1350円）」をいただきました。
しょう油の主張を強く感じさせる琥珀色のスープですが、口に含めばしょう油の香りや旨味と鶏の旨味が口いっぱいに広がり、塩辛さやカドはまったく感じさせません。その秘訣は和歌山県産のしょう油にたまりしょう油や再仕込みしょう油、魚醤などの良質な素材を使ったタレと、山水地鶏に黒さつま鶏、大山鶏、羅臼産の昆布などを組み合わせて取ったダシを組み合わせ、丁寧に旨味だけを引き出していればこそ。
これに合わせる自家製麺は、独自ブレンドの国産小麦を使用した中太の縮れた手もみ麺。鈴木さんが様々なラーメン店を食べ歩く中で衝撃を受けたのが、ツルツルとしたなめらかさと、モチモチとした歯応えが特徴の多加水麺。その理想を追求して、適度な縮れが麺をすするたびにほどよく暴れて、口当たりや喉ごしにもピロピロとした強弱がついて変化が楽しめる個性的な麺に仕上がっています。スープが“強い”だけに、麺の主張が少しでも弱ければバランスを崩してしまうであろう、絶妙な取り合わせといえるでしょう。
通常の「醤油ラーメン（950円）」では、三元豚のバラ肉をトロトロに煮込んだ煮豚と大山鶏の胸肉を使った柔らかな鶏チャーシューの2枚が乗るところ、「特製」では肉感を存分に楽しめる香り豚のレアチャーシューを加えた3枚のお肉がトッピング。さらに毎朝奥様が包んでいるという2個の自家製ワンタンは、スープがしみた皮を噛んだ瞬間、鶏一色だった口の中にブタとエビのスープが広がって一気に味変！　この鮮やかなコントラストはやみつきで、単品のトッピング（150円）として人気なのもうなずけます。名古屋コーチンの味玉も黄身の旨味が濃厚で、麺と絡めて良し、スープで溶いて良しと使いどころに迷うほど。
麺とスープは当然ながら、3種類のチャーシューに自家製ワンタン、名古屋コーチンの味玉と、すべてに妥協の見えない一杯。手間や原価の負担を鈴木さんにたずねると、「特製を頼んでくれたお客様も、チャーシューの数が増えるだけより、色々なトッピングが楽しめるほうがうれしいだろうなぁ、と思っています」とのお答えが。
こだわりのトッピングは「チャーシューご飯（350円）」や「ローストポーク丼（450円）」でも楽しめるので、こちらもオススメですよ。