国道17号の蕨駅入口交差点を上戸田方面へ進んで約1.5キロメートル、五差路交差点沿いにあるのが今回紹介する「麺屋あがら」です。
元々はつけ麺メインのお店として2013年にオープンしましたが、店主・阪上晴郎さんが故郷の和歌山ラーメンを期間限定で出そうとした際、その奥の深さに「腰を据えて取り組まなければ！」と考えて2014年にメニューをリニューアル。濃厚な豚骨しょうゆの和歌山ラーメンを常設メニューに加え、本格的な和歌山ラーメンとつけそばのお店として高い評価を獲得しています。
オープンから1年でのリニューアル、しかも関東ではなじみの浅い和歌山ラーメンという決断に迷いがなかったのかを伺ったところ、「自分が慣れ親しんだ味なので、いつかはやろうと思っていたので迷いはなかったですね。それより関東のラーメン店はレベルが高いので、“やるからにはちゃんとしたものをお出ししないと”という思いの方が強かったです」と語る阪上さん。これからの目標を尋ねると「やっぱり地元に愛されるお店であり続けるというのはもちろんなのですが、和歌山のことを知ってもらえたら嬉しいですね。ラーメン以外にも美味しいものがいっぱいあるので、うちのお店をきっかけに和歌山に行って“このラーメン美味しかったな”とか“この料理美味しかったな”なんて思ってもらえたら……なんて、誰に頼まれたわけでもないのに勝手に自分でそう思ってるんですよ（笑）」と、照れくさそうな笑顔で話していただきました。
そんな故郷への愛情がたっぷり詰まった「麺屋あがら」の和歌山ラーメンを、ぜひその舌でお確かめください！

今回は「麺屋あがら」のオススメナンバーワン、「豚骨中華そば（800円）」をいただきました。
見るからに濃厚そうなスープからはさぞ豚骨の臭いが……と思いきや、料理が提供されても臭みはまったく感じさせません！　スープをすくって口に含んでも、豚骨のクリーミーな甘さとコクが濃厚なのに、獣っぽい臭いがまったくないのが不思議なほど。これは阪上さんが一番こだわっているポイントで、臭みを出さないように豚骨の部位からこだわり、丁寧にじっくりと炊き上げることで引き出した味なのだそうです。しょう油ダレには、和歌山で100年以上の歴史を持つ「カネイワ醤油」が造る「天然醸造醤油」を使用。添加物を使わず、昔ながらの製法でじっくり時間をかけて醸造することでしかできないカドのとれた味わいが、しょう油の存在感を十分感じさせながら塩辛くならない秘訣でしょうか。スープ全体では甘さを感じるのですが、豚骨やしょう油に由来した甘さのためにクドさがなく程よい余韻が後を引きます。
麺には国産小麦のみをを使ったストレートの細麺を使用。濃厚なスープにも決して引けをとらない小麦の持つ甘みや香りを持ち、細麺特有の歯切れの良さで噛むごとに豚骨・しょう油・小麦のそれぞれが持つ甘みがシャッフルされて、口の中一杯に広がっていきます。
トッピングでは豚バラのチャーシューが3枚乗り、熱々のスープに浸すことでトロトロにとろけた脂と筋繊維のほろほろが絶妙な対比に。ネギのシャリッとした食感と、濃厚なスープにときおり加わる香味も程よいアクセント。特に目を引くのは器の中央で彩りを添える、和歌山の県花でもある梅の花の形をしたカマボコ。地元では定番の和歌山ラーメンのトッピングで、阪上さんが気に入っているチャームポイントのひとつ。
そのまま一気に食べ切ってもいいのですが、卓上の調味料にもご注目を！　和歌山県特産の「じゃばら」という柑橘類の100パーセント果汁がセットされており、爽やかな香りとほどよい酸味が濃厚な豚骨スープに加わることで、程よい清涼感を持つ味への変化を楽しめます。
細部までこだわり、“ちゃんと”が行き届いた和歌山ラーメンは、戸田の「麺屋あがら」でいただけますよ！