今回は埼玉県道15号川越日高線を川越から日高方面に走り、曼珠沙華の名所として知られる巾着田のすぐ近くにある「中華そば専門 とんちぼ」をご紹介します。
店主の丸岡さんは学生時代に家系ラーメンに出会い、ラーメン店を志したという生粋のラーメンファン。家系ラーメンが世の中に広まっていく中、お店をやるなら他にも武器が必要だと考えて都内の有名和風ラーメン店で修業を重ね、現在の「家系と和風醤油のハイブリッド（丸岡さん談）」ともいうラーメンに辿り着いたそうです。
味へのこだわりを尋ねると、「自分が美味しいと思っていないものを出すと、お客さんって敏感に感じ取るじゃないですか。そういうときの表情や視線を知っているので、僕は絶対に自分が美味しいと思うものしか出したくないんです」と、語る口が自然と熱くなる丸岡さん。日替わりでプレミアムな銘柄の日本酒を提供しているのも、「日本酒が好きな僕が、美味しいと思うものをお裾分けしているんです」と冗談めかして笑いながらも、“美味しさ”へのこだわりは決してブレません。
味以外にお店の大きな特徴となっているのが、親しみやすい家庭的な接客です。入退店時はもちろん、順番待ちの合間にもスタッフからの細やかな声掛けがあり、初めての来店でも地元の通い慣れた常連の店のような居心地の良さ。しかも待機用の屋根付きベンチには、座布団やブランケットまで用意されています。
いまやラーメン専門誌の総合ランキング1位に輝くなど、誰もが認める人気店となった「とんちぼ」。それでも丸岡さんは「14年前に鶴ヶ島の駅前で独立したときは未熟で、地元のお客様にずっと育てていただいたんです。メディアにも取り上げていただけるようになりましたが、自分が想い描いている味からするとまだ半分、登山でいえば五合目ぐらいです」と、さらなる高みを目指しているよう。
あくなき向上心で磨き続ける味と、お客様への感謝を忘れないもてなしの心が、いまの人気を支えている「とんちぼ」のラーメン、ぜひ一度味わってください！

今回はトッピングを増量した「特製中華そば（1200円）」をいただきました。 ラーメンが提供され、まず感じるのは丼から漂う煮干の香り。直前にスープで煮干しを煮出す“追い煮干”という手法でフレッシュな香りと旨味を引き出しています。一口スープを含むと、豚骨をはじめとする動物系主体の旨味がガツン！　と口全体に広がるインパクトのある味。この濃厚な旨味が薄れていくと同時に煮干をはじめとする魚介系の染み入るような味わいが鮮明になっていく、味のグラデーションが秀逸です。
麺は厳選した国産小麦を使用した自家製麺で、ふくよかな味ともちっとした食感で強いスープに負けない存在感を持っています。この味は日高への移転を機に製麺機を導入し、メーカーのテストキッチンに通いつめ、試行錯誤の末にほぼ独学で創り上げたもの。
トッピングのチャーシューは煮豚と焼豚の2種類があり、ジューシーでブルンとした弾力のある煮豚と、引き締まった筋繊維がはらりとほどける焼豚は対照的な食感が楽しめます。特筆したいのがスープに極力浸からないように乗せられた海苔で、口の中に入れた瞬間に広がる磯の香りは厳選された国産海苔ならでは。煮干の香りを引き立てたスープとのマッチングはいうまでもないでしょう！
不思議なのは、これだけ濃厚なスープのラーメンでありながら、食べ進めてもクドさや飽きを感じないこと。丸岡さんによると「うちのラーメンの特徴は、厳選した材料を使うのはもちろん、その量がいちばん他のお店と違うんです。他店では“ありえない！”という量を使って化学調味料に頼らずに家系のようなインパクトのある味を出しています」と、納得の答えが。
そして「とんちぼ」で見逃せないのが、「豚ばらナンコツごはん（380円）」です。地元・日高のサイボクが誇る“ゴールデンポーク”のナンコツを、トロトロになるまで煮込みご飯に乗せた「中華そば」「つけそば」と並ぶ三本柱！　じつはこちらの味付け、店主の丸岡さんのお母様による“おふくろの味”なのだとか。世界が認めたブランドポークを作るサイボクと、人気ラーメン店・とんちぼのコラボメニュー、日高市を訪れたら絶対に食べないと損！　ですよ。