手塚治虫や赤塚不二夫、藤子・F・不二雄に藤子不二雄Ⓐといったマンガ家たちが入居し、数多の名作を生みだした「トキワ荘」。その建物は1982年に取り壊されてしまいましたが、跡地のすぐ近くにある公園の中に、ゆかりの作品やマンガ家をテーマにした『豊島区立トキワ荘マンガミュージアム』として再現されました!
建築後10年経ったトキワ荘をモチーフとした建物の2階は、当時の間取りをほぼそのままに再現。一部の部屋は実際に住んでいたマンガ家の協力を得て、机やタンスなどの家具はもちろん、描きかけの原稿やペン、無造作に置かれた食器など、当時の生活そのままの景色を見ることができます。
また1階は、トキワ荘のマンガ家ゆかりの書籍を集めた「マンガラウンジ」と、期間限定の展示を行う「企画展示室」となっており、トキワ荘ゆかりの作家の作品を知ることができます。
藤子不二雄Ⓐの『まんが道』にも登場するトキワ荘。企画展で貴重な原画を目にするだけでなく、有名マンガ家の仲間入りした気分を味わえる、アミューズメント要素も満点のミュージアムをぜひ一度ご体験ください!
トキワ荘の写真資料から再現された建物は、数々の編集者が見たであろう玄関の光景も再現されています。入るとすぐに目に入る2階へ上る階段は、歩みを進めるごとにギシギシときしみ、当時の木造アパートが醸す雰囲気を放っています。
階段を上がるとすぐにあるのは、共同のトイレと炊事場。こちらも当時の光景を再現しており、炊事場には汁の残ったラーメンの丼や、焼酎やサイダーの空き瓶が卓上に並んでいます。
張り紙の跡がうっすら残った廊下を歩けば、今にも部屋からマンガ家たちが出て来そうな錯覚も!
廊下から各部屋への出入りは自由。ドアは開け放たれていますが、当時からドアは開いていることが多かったのだとか。
炊事場に残された焼酎やソーダの空き瓶の数々。トキワ荘名物“チューダー(焼酎のソーダ割)”を作った跡でしょうか?
いくつかの部屋は当時の入居者の証言をもとに再現されています。こちらの19号室もそんな再現部屋のひとつで、入居していたのはトキワ荘の紅一点・水野英子。編集者の紹介で入居した際には柳行李(当時の旅行ケース)ひとつで上京してきたというだけあって、部屋にあるものは机と座布団、柳行李だけ。インクを乾かしているのか、重ならないよう床に置かれた原稿が、いかにもマンガ家の仕事場らしい雰囲気が漂っています。
壁に貼られたカウボーイの絵は、当時ほかのマンガ家たちからも絶賛された物を、今回の展示に合わせて水野さんが描き下ろしたものの複製だそう。
ほとんど身ひとつで上京した水野さん。机や布団は編集者や赤塚不二夫さんのお母様が用意したそうです。
さっぱりとした部屋の中で、女性の部屋らしさを主張しているのが、積み上げられた「少女クラブ」や「花椿」などの雑誌。
こちらの20号室は、入居者の入れ替わりが何度かあり、鈴木伸一、森安なおや、よこたとくおらが住んでいた部屋。部屋の再現も時期によって3人の部屋を切り替えて展示しています。
現在は昭和33〜36年に住んでいた、よこたの部屋が展示中です。相撲や野球観戦が趣味だったよこたの部屋にはテレビが設置されていますが、自分で買うまでは他のマンガ家の部屋で見せてもらっていたのだそうです。
傾斜のついた原稿台や、様々なペンが並び「男の仕事場」という雰囲気のよこたさんの机。かわいらしい絵柄とは対照的かも?
テレビだけでなくステレオもあり、いまでいうAVマニアの一面も? 麻雀や将棋の道具は、赤塚と共同購入したそう。
2階にある常設展示室では、トキワ荘にマンガ家たちが集まった椎名町という街の歴史と、どのように輝かしい時代を迎えていくのかという、場所と時間に焦点を当てた展示内容。トキワ荘ゆかりのマンガ家たちが、自伝的作品の中で絵に起こした当時の街並みが、実際にはどんなものだったのかを貴重な写真や模型を使って解説しているので、現在の風景とすり合わせることができます。
こちらの展示を見れば、お帰りの際にまっすぐ帰るより、ミュージアム周辺を歩きまわりたくなってしまうこと間違いありませんよ!
1階にある「マンガラウンジ」では、トキワ荘ゆかりのマンガ家たちの作品を展示するスペースとなっています。壁に埋め込まれたモニターには、トキワ荘ゆかりのマンガ家へのインタビュー映像が上映され、貴重な証言の数々を聞くことができます。
またトキワ荘が取り壊される際、手塚治虫が『リボンの騎士』のサファイア姫と自画像を描き、警視庁に寄贈したトキワ荘の天井板も、メンテナンス後にここに展示される予定なのでお楽しみに!
マンガラウンジでは貴重な書籍や雑誌を展示しています。モニターではゆかりのマンガ家たちのコメント映像も上映。
トキワ荘を再現したジオラマ。机に向かって執筆にいそしんだり、キャッチボールに興じる姿は、実際にあったであろう光景。
1階の企画展示室では、2021年1月11日まで「トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展」を開催中です。トキワ荘では若手マンガ家たちから兄のように慕われていた“テラさん”こと、寺田ヒロオ。トキワ荘を舞台にした作品ではたびたび名前を目にするものの、いまでは見ることの少ない作品の直筆原稿や、貴重なインタビュー記事などから、その人柄をひも解く内容となっています。
入場料(グッズ付き)は大人500円・小中学生100円・未就学児無料。
貴重な原画を展示中。優しい線と強いメッセージの込められた内容に、寺田ヒロオの人柄が感じ取れます。
『トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展』の会期中は、トキワ荘マンガミュージアムの22号室にテラさんの部屋を再現。